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トピックス Vol.011
【令和2年7月豪雨 高山線に残した爪痕】

今年の梅雨は例年にないほどの大雨となり、熊本県を皮切りに甚大な被害を及ぼした「令和2年7月豪雨」。

岐阜県内でも7月上旬、飛騨地方を中心に甚大な被害を引き起こし、浸水害や土砂流入など、数え切れないほどの被害が確認されました。
そして、その被害は高山線にも。一部区間で、最大2週間もの間、列車の運転(+代行バスの運転)が出来なくなるほどでした。

7月下旬、被害が大きかった下呂市内の各所を訪れました。 すると、被害発生から2週間経ってもなお、爪痕が残っていました。

【1】 下呂方面に向かう列車にも影響が・・・

【2】 下呂駅と周辺の影響


【3】 バスで先に進みます・・・

【4】 鉄橋に、踏切 ・・・ 爪痕くっきり。

【5】 小坂町のそれぞれの北限

【6】 まとめ


◆ 下呂方面に向かう列車にも影響が・・・

7月21日(火) 美濃太田駅 7:31発 1711C列車 (※本来は高山行き)


まずはこの列車で下呂方面へ。1711C列車は本来、キハ25形の運用ですが...。

高山方面で、キハ25形が複数本居ること、更には不通区間を間にして、
南北(岐阜側と高山側)が寸断されていることによる、車両不足の影響で...

通常なら終日運用に入らない、留置されているキハ75形の1編成が、
早朝の1700C(土曜・休日は4700C)列車からこの列車にかけて、
2週間ほどの間、代走を担っていました。

これにより、代走期間中は下呂まではキハ75形が2本運転されていたことに。
 
・・・
 
しかし、この列車は本来・高山行きの列車であり、取材日は飛騨小坂駅まで列車の運転が出来ていました・・・。


ただ本来は、キハ75形は下呂駅までしか入線できないはず・・・。 下呂駅から先はどうしたか・・・ というと・・・

・・・
← 下呂駅2番線に停車中のキハ25形


下呂駅からは、2番線に停車しているキハ25形の列車に乗り換えとなります。

つまり、キハ75形で運転されるのは、下呂駅までとなります。

さすがに各駅に停車する普通列車ゆえに、段差問題があるからでしょうか・・・
 ちなみに、下呂駅まで運転のキハ75形は、通常通り1番線に到着。
 
 
 その後・・・ ↓↓↓
 
 
回り・・・
回り・・・・・・
回り・・・・・・・・・
そして、回り・・・・・・・・・
回送!ヨシ!

(↑こう言ってるかは分かりませんが...)



8時59分、美濃太田へ向けての回送として、発車していきました。

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◆ 下呂駅と周辺の影響

こちらは、下呂駅の電光掲示板(発車標)。

左側(高山方面)の発車標には、高山へ向かう列車がありません。
列車はすべて、飛騨小坂行きのみ。 更に普通列車のみ。

特急ひだ号は、下呂までの運転のため、萩原方面への運転は無し。

更に下呂まで運転されている列車も一部列車のみ&少ない両数と・・・
特別体制での運転が続きました。


また上下線とも、のりばが赤字になっています。
これは、(一部の列車を除きますが・・・)
通常と発着するホームが異なっていたことからこのような表示に。

下呂駅では損壊等の大きな被害はありませんでしたが・・・
運用面には大きな影響が出ました。

下呂駅の南側、下呂温泉街を流れる「飛騨川」。

晴れたこの日も穏やかな流れでしたが、

この2週間前・・・
特別警報級の大雨により、川は増水

穏やかな流れの飛騨川も牙を剥いたかのように濁流まみれに。
 
 
・・・
 
 
その影響で・・・↓↓
 
飛騨川に架かる橋のたもと。

赤く囲んだ部分)に水の痕跡が・・・。


撮影したのは、この場所の真向かいにある遊歩道。

この穏やかな流れからは想像できないほどですが、やはり豪雨。
水の驚異は、人の予想を軽く超えてしまうものだと実感しました。

それからこちらは、下呂駅から南西に約2km弱歩いた場所にある
下呂中学校」のグラウンド。
(※ 学校の目の前にある歩道橋上から撮影)

一見、普通のグラウンドに見えますが、実はここも・・・
豪雨のピーク時にはグラウンド一帯が浸水の被害に遭いました。

天気が回復し、水はだいぶ引いたものの、
豪雨の影響とみられる、不自然な水たまりも一部点在していました。

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◆ バスで先に進みます・・・

下呂駅周辺(旧・下呂町)地域から更に北へ進みます。 先述の通り、この日の下呂以北は特急列車の運休ということもあり、
次に下呂駅から出る萩原方面の列車は、午後までありません。 そのため、列車のない時間帯の穴埋めを普段から事実上担っている
濃飛バス」の路線バスを使って、更に北へ進みます・・・。

先程の下呂中学校から歩くこと1kmほど。

濃飛バスの下呂バスセンターから乗り込むこのバス。

本来なら「高山バスセンター」行きのバスで、
国道41号線を北上し、高速道路を通らず高山へ向かう
れっきとした”路線バス”なのですが・・・

(窓の右下をよく見てもらえればわかるように・・・)
行先表示に設定されていないためか、

門坂止め」との案内が。 この日(7月21日)時点で
下呂バスセンター側からバスで行ける最も北の地点、
下呂市小坂町門坂のバス停までの運転です。

このバスの終点・門坂バス停の先では、
皆さんも各種報道でご覧になった方も多いと思います。

国道41号線の路面が崩落した箇所に差し掛かります。

そのため、門坂のバス停と下呂バスセンター間の
折り返し運転が続けられていました。(~8月16日まで)
その門坂行きのバスに乗り込み、一路、北へ。

下呂温泉街から離れると、
飛騨川沿いの歩道には、早くもこのような光景が・・・。

増水の影響とみられます・・・。
 
 
 
その後も、川沿いを進むにつれ、豪雨の爪痕が次々と。
 
 
 

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◆ 鉄橋に、踏切 ・・・ 爪痕くっきり。

バスに乗ること15分ほど。ちょうど目にした鉄橋の光景が衝撃的だったので、予定よりも手前にあるバス停で降車。その現場へ歩くことにしました。

その現場の様子がこちら。


場所は、下呂市萩原町中呂。
下呂~禅昌寺 間の、禅昌寺駅にほど近い鉄橋です。

枝や木くずが鉄橋の支えの部分に引っかかっています。

豪雨が特に顕著だったのは現場に行く2週間前。
相当な時間が経っているにも関わらず、この状況。

豪雨・増水の凄まじさを特に感じた一コマです。
遠目でもはっきり分かってしまう、破壊の有様です。

この鉄橋を後にして、更に北へ歩きます。

鉄橋から歩いてすぐ(約500mほどの場所)にある、
岐阜県が設置した、「中呂水位観測所」。

大雨特別警報が出た7月8日(水)の早朝、
この中呂水位観測所で、氾濫危険水位を観測。

そのため、この地域一帯では
避難指示が出るなど、甚大な影響が出ました。
そして、この観測所のすぐそばの歩道。
(右側の車道は、国道41号線)

明らかに不自然な砂が広がっており・・・

↓↓
歩道の真横には沢山の土のう・・・。

氾濫発生時の影響もとい爪痕を感じます。

その後、更に北へ進み、萩原町の中心部にほど近い場所まで・・・

萩原町に入ると、41号線沿いにはこのような看板も。

小坂町門坂の通行止め現場が近づいていることもあり、
高山市街地へ向かう場合の迂回路の案内が。

(※国道41号線は現在、崩落現場の一部で
片側通行ですが、通行止めは解除されています。

再び路線バスに乗り、更に先へ進むと・・・

皆さんも見覚えがある踏切かと思います。

下呂市萩原町
飛騨萩原~上呂 間にある「岩野」踏切。

入口はコーンで塞がれ、その先には土のうが山積み。



そして、入口付近に目をやると・・・
↓↓↓
これまた不自然な水たまり・・・。

これでは、歩いて渡れても、さすがに躊躇います。



更に奥に目をやると・・・
↓↓↓
大量に山積みされた土のう。
坂道を上った先にもまた積み上げられた土のうが。

そして、ガタガタになった坂道は路面に大量のヒビ。
通行するには極めて危険な状態です。


土砂崩れ、そして踏切や線路への流入。
今回、私が現場で見た中では最も被害の驚異、
凄まじさを実感したのがこの踏切でした・・・。
手前の白い砂利が敷かれたところが
この現場で、土砂の流入のあった箇所。

この日の時点で既に列車が運行できる状態でしたが、
安全のため、徐行運転が行われていました。
また、この踏切から北へ数百mほど歩いた先。

舗装された崖が見えてきました。


この場所は、2年前・2018年の豪雨災害時に、
土砂崩れが発生した崖。この時もしばらくの間、
高山線では特別ダイヤによる運行が行われていました。

わずか2年で、また近くの箇所で土砂災害が起き、
また列車の運行にも影響が出ることになろうとは・・・

豪雨災害が年々、深刻化してきていることを実感します。

萩原町の被害現場を目の当たりにし、続いては更に北へ。小坂町へ向かいます。

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◆ 小坂町のそれぞれの北限

次は 門坂

通常なら途中の停留所なのですが・・・
(当時)国道41号線の通行止めにより、ここが終点に。
その門坂のバス停。山に囲まれた場所にあります。

すぐ近くに民家などはありませんが、
歩いて1km前後歩いた集落にいくつかの住宅があります。
そのバス停からすぐ近くの、「門坂」交差点。
ここでは警備員の方が立って、車の誘導をしていました。

当時はここから北へは、歩行者・車ともに進むことが出来ず、
下呂市街地からここまで来た車については、再度、南へ
折り返すことになっており、バスもほぼ同様でした。

ちなみに横の地下道は、先述の集落に向かうためのもの。
ここを通り、北(久々野方面)へは進めませんでした。
この門坂付近から見る高山線 (飛騨小坂~渚 間)。

大変に眺めのいい箇所なんですが・・・
この日はまだ、運転再開前。(この区間以外は再開済)
ここを列車が通ることは、残念ながらありませんでした。
こちらは、門坂のバス停から南西へ歩くこと約10分の場所。

ここにも土砂流入のあった箇所が・・・。
既に撤去は済んでいましたが、この区間は結局、
7月22日(水)まで列車の運転が見合わせとなっていました。
門坂バス停から歩いて約3kmほど。

この日(7月21日)時点で、岐阜側から列車で進める
最も北限だった駅、飛騨小坂駅

相変わらず丸太づくりの立派な駅舎がお出迎えしてくれます。
そして、こちらは飛騨小坂駅・2番線に停車中の列車。

2番線は本来、久々野・高山方面行きのホームですが・・・
先述のように、この当時は飛騨小坂駅より先が不通。

美濃太田、下呂方面からの列車はいつも通り2番線に入線。

ですが・・・

折り返しもそのまま、2番線からとなりました。

そのため、「高山方面」と案内されているホームに、
美濃太田行き」の列車が停車しているという異例の状態。

普段、飛騨小坂駅で折り返す列車は無いですもんね・・・。
ちなみに・・・ キハ25形には「飛騨小坂」の行先表示が、
設定されていないことから、行先表示は空欄となっています。

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◆ まとめ

飛騨地域を襲った凄まじい豪雨は、高山線にも甚大な影響を及ぼしました。現場で見て、豪雨や土砂災害の驚異や恐ろしさを、より実感しました。

現在、高山線は通常通りの運行に戻っていますが、温暖化等の影響で、またいつ大雨が降るか分かりません。
もうこれ以上の被害が起きないことを祈りつつ、各自でも大雨に対する警戒や対策を、より意識的に行うようにしていきましょう。

外出時は特に、気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」など、リアルタイムで各自で確認できる雨雲レーダーを活用する他、普段から天気予報をチェックして行動するようにしましょう。

雨の時期はひとまず終わったものの、これからは台風シーズンが控えていきます。 天気の急変に、くれぐれもご注意下さい。

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今回も、最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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